このひろーい宇宙いっぱい


雨天の合間を縫って冬支度。
即ちお布団を干すこと、これ我が使命。


炬燵さまを出した。マイルームのおこたさまは、
通常時の台よりも一回り小さいので、ほぼ半分が
小物やファイルなどの置物で埋まってしまう。
でも暖かいので、おこたさまは偉いと思う。


羽毛布団ちゃんを出した。買ってよかった。
本日早々に、私の頭をよぎる「ずる休み」の文字。
羽毛布団さんに罪はないけれど、忍耐を試されるひととき。


くまさんから犬さんにシフトチェンジ。
スリッパのはなし。
ずっと使っていたくまさんスリッパは、愛くるしい
のみならず、もほもほの毛が私の足にぴったり
フィットする心憎いやつだった。
しかし愛用しすぎて穴があき、スリッパのくせに
板間の冷たさを私の土踏まずに伝えるようになった。
今更土踏まず強化の為に土道を走るわけにもいかず、
というかそれでは何の為のスリッパか分からないので
買い置いておいた犬さんスリッパにチェンジ。
とぼけた顔が愛い奴だが、まだ足にぴったりフィットは
しない。そして穴の開いたくまさんもなんだか
捨てるにしのびなく、取り敢えずとっておいてある。
結局は捨てるしかないのに。
何故だか物に対しては妙にウェットな私。


  ※※※※※


読了本3連発。ざっくり。

早瀬乱『三年坂 火の夢』講談社


江戸川乱歩賞受賞作、と言われれば手にとってしまう
ミステリ好きの性。地の文の視点がはっきりしなくて
「あんたはいつの誰よ」と思うこともあったが、
日本語が不安定であるというような欠点ではなく
安心して読めた。ただ、選評の誰かも書いていた
けれど、「三年坂を探す」という魅力的な謎に
よっかかり過ぎている感もあったので、次作で
どう出るかに期待。


矢作俊彦『ららら科學の子』文藝春秋


筒みたいな主人公だと思った。一般名詞ね、筒。
全共闘運動時代に日本を脱出し、文革の中国に渡航
かの地で30年を過ごして日本に帰ってきた主人公。
自らを浦島太郎に喩えることはあるけれど、
現代日本に順応しないわけではない。そのように
順応していく自らへの違和感や驚きも感じている。
でも、それら一切の事象は彼の中を素通りして、
彼の本質を変えるものではないように見える。
普通だったら、もっと多大な影響を受けると
思うのだが。
彼と出会う人々も、色々な姿を彼にぶつけ、そして
通り抜けていく。彼は、全てを透かすガラスでは
ないし、何かを投影する鏡でもない。やっぱ筒。
名前が明示されず、地の文では「彼」とのみ称されている
ことも、この主人公の筒っぷりを増していると思う。


ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア
『たったひとつの冴えたやり方』(The Starry Rift)
浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF


この翻訳者の方、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の
翻訳もされているんですね。それは読んだわ。
ということばからも分かるように、まるでSFオンチな私が
手に取った一冊。有名な表題作は、連作中篇の第一篇。
「泣けるSF」だということを読了後に知りました。
主人公の女の子(たち)は生き生きしているし、中盤以降の
展開は確かにスリリング。しかし…泣けるかと言われると
…私が個人的に、ちょっとこういう自業自得タイプの
登場人物を好まない、ということもあるでしょうが…
無理。無理な人がいてもいいじゃないか。
むしろ胸を衝かれたのは、第三篇「衝突」。とりわけ
この中でもたったひとつのエピソード、即ち「信じる」とは
どういうことか。
そのシンプルにして明快な解答が示される場面には、
思わず唸ってしまった。


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まだ待っている未読本。
ハインライン月は無慈悲な夜の女王
ディック『流れよわが涙、と警官は言った』
どうした私。新境地開拓にしてもベタすぎて
ちょっと恥ずかしいぞ。いや、ここは逆転の
発想だ。SF好きの男の子を好きになった高校生みたいで
甘酸っぱいぞ。うわ、どっちにしろ恥ずかしいや。