まぶしくて息もできない


冬の朝の風景は、まぶしくて凄烈でとても美しい。
でも何故それをしみじみ実感するかといえば、
1年中、いつも同じ時間に列車に乗っているなかで、
冬のその時間は朝の曙光が射し始める時間と合致する
からなのであって、夏の曙にもまた味わいがあるのだろう。
もうちょっとしたら家を出る時間にはまだお外は
暗いということになる。ダークだ。二重の意味で。


   ※※※※※


読了本。森絵都フェアー
『DIVE!!』(上)(下)、『つきのふね』(全て角川文庫)

これらの本の一般対象年齢、つまり中高生当時に
この本に出会えていたなら幸せだっただろう、
なんてつまらないことは言わない。大人が読んでも
十二分に面白い。


『DIVE!!』は高飛び込みをする少年達の物語。
所謂「スポ根もの」かな。彼らが最後、どのような
結果を残すのか、手に汗握って目が離せない。
第4部の息詰まる展開はおみごと。また、登場人物の
キャラクターや彼らの会話も素敵。


『つきのふね』に登場する人々は、中学生もおとなも
みんな少しだけ、でもごく当たり前に、弱い。
そしておそらくしなやかに強いだろうことも、同時に
感じさせてくれる。


どちらにも共通して言えるのは、「わたしたちの居場所」
のはなしなのではないかということ。「居場所」という
表現でなければ、立ち位置とか立脚点とか基盤とか、
foundation?
「わたしはどこにいるの?」というのはありがちな
テーマであって、思春期の人間を主人公に据えたとき、
おそらく一番最初に出てくるものだろう。
でも、これらはその「居場所」をそんな陳腐な
やり方で描くものではない。そうではなくて、やはり
どこか不安定なこの年頃の人間を描こうとするとどうしても
透けて見えてくるその問題を、中心に据えず、でも決して
軽視することなく示している。
そしてその「わたしたちの居場所」の問題は、なにも
中高生だけの問題ではないだろう。それを「わたしは
どこにいるの?」という直接的な方法で描いていないことで、
逆に、大人にも胸に迫るものとして浮かび上がってくる。


そして「これは大人だからにやりとするのでは」という
細工が色々ちりばめてある。私が印象に残ったのは、
『つきのふね』の中で、母・姉・主人公の中学生という家族
3人の女性が映画「危険な情事」を観た感想を述べるところ。
これは実感を伴って笑ってしまった。