毛布と羽毛布団と本。


冬の三種の神器。酒付き。


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読了本。電車往復1冊、帰宅後1冊で睡眠不足。


楡周平『ラスト ワン マイル』新潮社
『再生巨流』(新潮社)と同じく物流業界を
舞台にした経済物。郵政民営化による運送業界への
しわ寄せと、IT企業の台頭を乗り越えるために
打ち出された新規ビジネスとは。
登場するIT企業が、明らかに「あ、ホリエ楽天風味」。
やっぱりモティーフとして面白いのかな、あれは。
にれっちの本は、なんだかんだで基本的に
勧善懲悪が守られている。善悪の判断は
ともかくだ。朝倉恭介だって、ダーク「ヒーロー」
でしょ。だから安心して読めるのだけれど、
人によっては是非があると思う。
でもこの本の真髄は、「勧善懲悪」ではなくて、
テーマとなっている新規ビジネス案の面白さにある。
確かに「そんなうまくいく筈ねぇよ」と素人目からも
思える点が幾つかあるが、ある程度の説得力は
あるように思える。それは、主人公である横沢の
熱意に、読者も引きずられているのかも。いやー、
説得力をもたらすのは、割と熱意よ。
そして『再生巨流』を読んだときにも思ったけど、
これはある程度焼き直ししたら、現実に
適用できるんじゃないの?素人だから分からんが。
にれっちは、ある程度実用性を見越して書いているように
思えるんですけどね。
ああ、どうでもいいけどこの本の書き出し、
地下鉄出口から主人公が上がってくるところ。
ありがちなシーンかもしれないけれど、激しく
どこかで呼んだ気がする既視感。
いおりんの『シリウスの道』だったかな…。
更にどうでもいいけど、にれっちとかいおりんとか、
好き放題だな、読者は。小娘なのに。


恩田陸クレオパトラの夢』双葉文庫
この人は、「場」を作るのがとても上手な作家だと
思う。物理的に交流可能でも、どこかクローズド
サークル的な場所。そういう点で、この本の
主人公、神原恵弥が登場する1作目『MAZE』は
不可思議な「場」の設定が秀逸で、地味に私の
フェイバリット恩田陸だ。
本書は、北海道H市が舞台。もちろん「場」も
重要なのだけれど、割と正統な「秘密」を
追う物語になっている。オチも「え、そこ
終着地?」という感じはしない。話の展開は
然程派手ではないかもしれないけれど、珍しく
(という言い方も酷いか)ラストまで
丁寧に読者を運んでいってくれている気がする。
それにしても神原恵弥、一層「おばちゃん」に
なってるぞ。